真夏の危険地帯15

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「そういうこと言うわけ? 別にあんたが俺にだまってライブに出ようがどうしようが関係ないって?」
「わかってるじゃないか。俺がお前の仕事に口出ししたことがあったか?」
「ああ、そうかよ、よくわかった」
 途端、電話は切れた。
 元気は一瞬事態を把握しかねた。
 不快な機械音に気づいてやっと受話器を戻す。
 あんな風に言うつもりはなかったのだが、つい、売り言葉に買い言葉というやつだった。
 四年前、別れを告げてこの町に戻ってきた元気を忘れられず、豪はストーカーのように元気を思い続けて、最近注目のカメラマンのくせに、ついに元気の住む町に引っ越してきてしまうほど元気一筋な男で、いつも元気の顔を見ると喜んで尻尾を振って駆けてくるリュウと次元が一緒よね、などと紀子に言われている、バカみたいに一途な男なのだが。
「豪さん、今頃泣いてるよ」
 紀子から冷たい一瞥を投げかけられて、元気はうっと言葉に詰まる。
 下手に豪に話すとグジグジしそうだからと、浅野に断り切れずにこっそりほんのちょっとならと出てみたライブだったのだが、やっぱり全然世の中に乗り遅れた過去の人間ってとこじゃないか、俺は。
 去年の夏、ちょっとした行き違いから一平に何やら言われたらしく、以来「GENKI」に戻って一平の元に戻るんじゃないのかと、必要以上に豪は意識していたのだ。
 だから俺は………。
 あーあ、と元気は心の中でため息を吐く。
 その時ドアが開いて、また数人の観光客が入ってきた。
「いらっしゃいませ」
 気を取り直して、元気は何とか仕事モードに切り替えた。
 しかし、ネットで大騒ぎになってるわよ、という紀子の台詞が頭の片隅に引っかかり、閉店時間になると店を閉めるなり小雨の中を家に飛んで帰り、ちまちま携帯で見るより早いだろうと部屋に上がってパソコンを開いた。
 そこには元気の予想をはるかに超えた状況が繰り広げられていた。
「冗談だろ………」


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