真夏の危険地帯16

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 昨夜のライブ動画がネットに氾濫している。
 アクセス数も半端ない。
 中には携帯とかではなく、絶対望遠で撮っただろうという画像までアップされ、ベネチアンマスクとブロンドのかつらの自分がしっかり写し出されている。
 この調子だといったいどこまで広がっているのか想像もつかない。
 個人ではなくマスコミの記事としても、新メンバーを小出しにしているのではなどというものはまだいい、謎のベネチアンマスク、幻のギタリストは一体何者だ、などと明らかにユーザーを煽っているものもある。
「ったくこれじゃ、まるでピエロだ」
 自分自身を罵倒して、元気はパソコンを閉じると、リュウの散歩に外に出た。
 この辺りは夕刻になれば風の温度も下がる。
 短い通り雨だったが、雨の後ならぐんと涼しい。
 東京にいた頃のことを思えば、窓を開けて、少しくらい寝苦しい時があっても扇風機でもかけていれば夜もぐっすり眠れる。
 そんな毎日にすっかり同化していた元気だが、謎のギタリストなる、まるで見知らぬ自分が勝手に世の中に出て暴走しているのを見ているような気がする。
 どっちにしても、ちょっとみっちゃんと話さなきゃな。
 川べりの道を歩く元気の頭の中を、ネットの記事や動画がぐるぐると駆け巡った。
 豪が余計な勘繰りをして、また諍いをするのを避けたいという思いもあって、元気とわからないようにこっそりやるのならいい、と浅野には言った。
 だがこれではまるで逆効果だ。
 よかれと思ったこっそりが仇になってしまった。
 だからといってさっきの豪に、実はと言ったところで、馬の耳に何ちゃらだ。
「くそ、勝手にしろ!」
 思わず口にした元気を、リュウが不思議そうに見上げた。


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