真夏の危険地帯19

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 仏頂面のまま足元に肩にかけていたバッグを置いてカウンター席に座った豪は唇をきっと結び、怒っている証拠にくっきりとした目をいつも以上にギロリとさせて元気を斜に睨みつけている。
 それを見て見ぬふりをした元気は、黙って紀子の持ってきたオーダーのコーヒーに取り掛かった。
「……コーヒー」
 ちょうど声をかけようかと思っていた元気より先に、ボソリと豪が言った。
 図体はでかいくせに実は人見知りなところがあって、知らない人間の前では口数も少ないしむっつりしているから近寄りがたく寡黙に見えるのだが、親しい人間の前だと豪は喜怒哀楽がすぐ表に出る。
 笑うと笑顔が異様に可愛いとそのギャップに女の子たちが騒いだものだ。
 面白くない時むくれている顔はまるでおもちゃを買ってもらえない時の子どもだ。
 今の豪がまさしくそれで、カウンターに肘をついて無暗に携帯をいじっている。
「今日はオフなんだろ? 次の仕事はいつからだ?」
 豪の前に入れたてのコーヒーを置くと、元気はさりげなく尋ねた。
「俺が仕事に行ったら、また一平と約束でもするのかよ」
 ざわっと元気の周りの空気が揺らいだ。
 たまたまカップを下げてきた紀子にも聞こえたらしく、元気と豪の顔を交互に見た。
「コーヒーゼリーとアイスコーヒー追加ね」
 紀子は豪の台詞には関知せず、ことのほか明るい声で元気にオーダーを告げた。
 今度は元気が静かに怒ったのがすぐにわかったからだ。
 普段は優しくてあたりがいい元気も、ヤロウ限定だが声に出して怒るくらいならままあることだ。
 ただし本当に怒ると態度が冷ややかになる。
 豪のはダダコネと同じようなもので、つい甘えて嫉妬でそんな言葉を吐いてしまったのだが、口にした途端うっかり地雷を踏んでしまったらしいこともわかったはずだ。
 元気は今日はもう口をきいてくれないだろう。
 とはいえ一度口にしてしまったことはもうなかったことにはできない。
 豪はふうっと大きく息をついてコーヒーをすすった。
 くっそーー!


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