真夏の危険地帯21

back next  top  Novels


 男にチャラい感じはないが、去年の赤坂プロダクションのこともあるし、業界関連の連中には関わりたくはない。
 元気は名刺を見ようともせずに、黙々と手を動かす。
「天木って言います。ファッション関係の雑誌なんですが、GENKIはちょくちょく取材させてもらっているんですよ。確かにコーヒーは美味いけど、やっぱ元気さんの天職じゃないよな」
 無言で元気に拒否されているとわかっているのだろう、自己紹介をして、天木は尚もしゃべりをやめない。
「さっきの、坂之上豪でしょ? やっぱ今もずっとつきあってるんだ?」
 天木が口にした言葉に、元気の手が一瞬止まる。
 こいつ、何で知ってるんだ? どこまで………?
 同年代かもっと若いだろうその男に、元気はちらりと冷ややかな視線を向けた。
「まあ、アメリカも同性婚OKになったし、ハリウッドの俳優とかアスリートなんかもカムアウトしてる時代だし、けどこの日本じゃどうかな。GENKIのファンとか、うーん、中には歓喜する女の子も多そうだけど」
「俺はGENKIとは何の関係もありませんから」
 イラつきながら元気はようやく口にした。
「またまた、GENKIのアルバム、毎回いくつかの曲は元気さんでしょ? 第一、こないだのライブだって、元気さん以外にあんな音出せないっしょ?」
 元気はそれには答えずに、カップを洗う。
「この辺り、いいですよね、自然がいっぱいで。二、三日取材であちこち行くんです。またお邪魔します」
 天木が席を立つと、紀子がレジに行った。
「ありがとうございました」
 天木を見送ると、紀子はカウンターから元気に声をかけた。
「ね、取材とか言ってなかった?」
「フン、たまに来る迷惑千万なヤカラだ」
 不機嫌そうに元気は答え、カウンターの名刺をしばし睨みつけてからポケットに入れた。
 何なんだ、一体? 何が目的だ?
 元気はどうにも不穏な面持ちで、天木の出て行った後に目を向けた。


back next  top  Novels


にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ

ようこそ、お立ち寄り有難うございます。お気楽ハピエンBL小説です。