真夏の危険地帯22

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 イラついて混沌とした頭を抱えながら朝帰りした元気は、お散歩を待っていたとばかりに尻尾を振りながら出迎えたリュウを撫でると、すっきりするために飲もうと思っていたコーヒーを後回しにして、リュウにリードをつけた。
 八時を過ぎたところだから、リュウを結構待たせてしまったようだ。
「元気、二日酔い?」
 気配を察した母親が居間から声をかけた。
「ああ、ちょっと夕べ……」
「あんた、こないだ、わざわざギター弾くために東京行ってたの? アルバイト?」
 言葉を濁して出かけようとした元気に母親が気になることを言う。
 えっ、と思わず居間まで戻ってきた元気にリュウが不承不承ついてくる。
 コーヒーを飲みながら、テーブルの前に座る母親が見ている55V型、4K画質の大きな画面にドカンと陣取る、ベネチアンマスクに金髪がギターを弾いている画像に、元気は絶句した。
「先日横浜ベイアリーナで行われた人気ロックグループ、GENKIのライブは大盛況だったことはもちろんなのですが、今、巷でネットで盛り上がっているのは、そのアンコールに登場した謎の超美形ギタリストのことなんです!」
 ことさら大げさな身振りの女性リポーターの言葉に、元気は頭痛すら覚えてきた。
「ベネチアンマスクに隠されてはいますが、絶対美形に違いない、この謎のギタリストの正体を巡っては様々な憶測を呼んでいるのです。かつて某人気グループを脱退したアイドルとも、ロンドンでグループが見つけてきた新メンバーとも言われているこのギタリストは一体何者なんでしょうか!」
 視聴者を煽る芝居がかった台詞の次には、ネットでも流れていた動画が音付きで流れてくる。
「たまには息抜きにこういうアルバイトもっとやったらどう? それより何もお父さん、こんな田舎の店、無理に続けてほしいとか思ってたわけやないし、やりたければまたバンドに戻ってもいいんよ?」
 テレビのリポートの内容と母親の言う内容のちぐはぐさに元気はようやく気づいた。
「ああ、いや、店は好きでやってるわけやし、ギターはまあ、アルバイトだから…」
 金髪のかつらに大きなベネチアンマスクではそれこそ美形かどうかなんてわからないだろう画像だが、この母親にはどうやらお見通しということのようだ。


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