真夏の危険地帯23

back next  top  Novels


 げに恐ろしきは母親なり?
 少々太り気味になり、垢抜けしない服ばかりしか着てはいないが、若い頃はそこそこの小町娘だった母親とちょっとイケメンで温和な父親は、この界隈ではなかなか評判のいいカップルだったらしい。
 悠々自適なメリーウイドウをやっている母親の雛子は、隣のH市の出身で元は実家は古い旧家だが、実の母親は子供の頃に亡くなり、後妻に来た義母は自分の息子である現当主ばかりを可愛がり、雛子を疎ましがったのだと遠縁の親戚から聞いたことがあった。
 そんな理由から元気の中学の時に祖父が亡くなってからは雛子の実家とは本当に縁が切れたかのように行き来がなくなった。
 父親の勇三も既に父母も亡く、遠縁の親戚とはほとんどつき合いもない、雛子とはお互いしかいないような境遇で、絆は強かったのだろう、些細なことで口喧嘩くらいはよくあったものの、仲のいい夫婦、仲のいい家族だった。
 勇気、元気の兄弟は、何かを強制されることもなくおおらかに育ったかわりに、自分たちで取捨選択せねばならず、悪ガキどもとバカをやっていてもどこかクールなところのある子供だったかもしれない。
「お騒がせしている先日のライブはGENKIとしてもベストだったと思っています。おそらくファンの皆さまも気に入っていただけたのではないかと思います」
 しばしノスタルジックな気分に浸っていた元気は、聞き覚えのある声にふっと我に返り、画面に目をやった。
 すっかり実業家然とした涼子が、Gコーポレーションの自社ビルの前でたくさんのマイクに囲まれている。
「ですが、飛び入り参加してくれたギタリストはあくまでも純粋に音楽が好きなだけなんです。これ以上詮索されると、二度と彼がステージに立つことはないと思われます」
 きっぱりと言い切った涼子の言葉に、胸を撫で下せるかと思いきや、つまり次もあると宣伝しているということではないか、と元気は思い当たり、後ろで糸を引いているのだろうみっちゃんの喰えない性格に呆れかえる。
 それにしてもワイドショーまでがこんな話題を取り上げるとは思いもよらなかった。
 しかもどこぞから去年の赤坂プロダクション関連の事情通でも現れたら、元気のことが知れる可能性もある。
 また眉間に皺を寄せた元気は、さらに頭痛の原因を作った男のことを思い出さざるを得なかった。


back next  top  Novels


にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ

ようこそ、お立ち寄り有難うございます。お気楽ハピエンBL小説です。