真夏の危険地帯26

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伽藍に思いがけない訪問があったのは夕方近くになってからだ。
「よう」
グレイのTシャツに生成りのチノパン、やはり生成りのジャケットを羽織った男はフレームレスの眼鏡をかけていた。
大学時代は髪を長くしていたこともあったが、一度切ってからはずっと短めに揃えている。
「珍しいな、常に多忙なみっちゃんが」
軽いスニーカーのせいか、音もたてずにすっとカウンターのスツールに座ったみっちゃんは、一人でいると人気グループのメンバーであるような気配をすっかり消して、かろうじて髪の栗色が普通のサラリーマンではないと思われる程度だ。
「いや、もとはと言えばこっちが頼み込んだ話だし、ちょっと大ごとになっちまったからな」
言葉遣いも静かで目立たない。
「今更、よく言うぜ」
元気はコーヒーを入れてみっちゃんの前に置いた。
「あ、俺が最初から想定済みでやったとか思ってるな?」
「じゃないのか?」
「正直半分は予想外。アンコールだけだと侮っていた。こんな超短時間で情報が浸透するとは、俺の脳ミソもひからびた」
苦笑いするみっちゃんに元気は怪訝な視線を向ける。
絶対何かなければ、わざわざこんな田舎にみっちゃんが出向くわけがないとはよくわかっている。
「謎は憶測を呼び憶測は更なる謎を呼ぶ。謎ってやつに人間はどうしても興味をそそられずにはいられない」
「お前な……」
「涼子がインタビューで釘を刺したものの、ファンは大抵、事実をわかっていたとしても今後元気をまた見たいがために公表したりせず、内々にとどめてくれるだろうが、問題はファンじゃなくて、業界の有象無象どもだ」


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