真夏の危険地帯34

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 一見何の害もなさそうなみっちゃんの表情に元気は少しイラついた。
「一平がまた荒れてる。なまじ元気が一緒にステージに立ってくれたもんだから、あいつ、元気欠乏症、それも重症」
 徐にオクラを載せた豆腐を口に運びながら、淡々とみっちゃんが言った。
「はあ?」
 一瞬意味をはかりかねた元気は怪訝な声で聞き返した。
「何だよ、それ」
「言葉どおり。まあ、一平も昔よりは大人になったから、ライブをホッぽりだすようなことはしないし、次のライブまで間があるから何とかってとこだけど、はっきり言ってこないだのライブ、最低」
 残った豆腐をみっちゃんは無駄につつく。
「そんなこと言われてもな……」
 みっちゃんのことだ、多少の誇張はあるかも知れないが、わざわざこんな田舎まで出向いて、元気相手に愚痴るとはよほどのことなのかも知れない。
「あいつ、最近、女、断ってんだよ」
「はあ???」
 またしても聞き間違えじゃないかというようなことを言われて、元気はみっちゃんの顔を睨むように見た。
 そこへ冷酒やカプレーゼが運ばれ、一時二人は口を噤む。
 スタッフが離れると、みっちゃんはゆっくりと冷酒を口に運び、また口を開いた。
「まあ、お前に何とかしろってわけじゃないが」
「俺に何とかできるわけ、ないだろ」
 つい、語気が強くなってしまう。
「そういきり立つなって」
 みっちゃんはまたため息を吐く。
 確かに、自分の音を追求しながらGENKIを、あの一平をうまく操縦してここまでくるには、いかにみっちゃんの手腕が優れていたにしても、並大抵のことではなかっただろう。
 無論涼子の力もあってこそだし、見方を変えればGENKIはこの二人が中心となって創り上げた一大プロジェクトなのだ。
 元気はあらためてこの実業家の顔を持つアーティストを見つめなおした。
「はっきり言わせてもらえば」
 みっちゃんは元気の視線を見返すように向き直る。
「そもそもGENKIってのは、元気、お前そのものなんだよ」
「何言ってんだよ」


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