真夏の危険地帯42

back next  top  Novels


 数日後、かろうじて台風が来る前にオーストラリアから戻ってきた男が、早速伽藍にやってきてアホ面をさらした。
「ただいま、帰りましたぁ!」
 ちょうどまったりとお茶を飲んでいた東が、大きな男を振り返る。
「あ、ちょうどよかった、東さんにも土産、あるんすよ」
 バックパックから取り出したワインと可愛らしいコアラのストラップを渡されて、東はにんまり。
「お、今回はオーストラリアか、豪。ありがたく頂戴するわ」
「そらもう、東さんには何かとお世話になってるし、紀ちゃんにはオーガニックコスメだよん」
「わあ、さっすが豪! わかってるよね~! ありがとお!」
 ハンドクリームやらリップバーム、それにプラセンタクリームやらを渡されて、紀子も大喜びだ。
 しかし何やら異様にテンションが高い豪に、元気は怪訝な視線を向ける。
「元気には、ルピシアのお茶と蜂蜜、それに現地に住んでる人に勧められたジャム。うまいってよ」
「……おう、サンキュ」
 お茶は嬉しいが、無事に豪が帰ってきたことにほっとしているのだとは、元気は口にしない。
 客も少ないのをいいことに、テーブルに陣取って、これはどこで撮った、ここの海は恐ろしくきれいだった、と豪は紀子相手にカメラの画像を見せ始めた。
「うわ、可愛い! これ、さわりたい、コアラ!」
 紀子は一つ一つの画像に声を上げている。
「しかし、蒸し暑いな…台風くるんか、やっぱ」
 カウンターで頬杖をついた東がひとつ欠伸をした。
「まあ、この辺りはちょっと掠めるだけだろ」
 こんなのんびりとした日常がいいとか思ってしまうのは、年を取った証拠か。


back next  top  Novels


にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ

ようこそ、お立ち寄り有難うございます。お気楽ハピエンBL小説です。