真夏の危険地帯5

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 ともあれ「GENKI」がいよいよメジャーデビューという時になって元気が突然、田舎に帰って亡くなった父親の店を継ぐと言い出して脱退したものの、新たにギタリストとして斎藤正を迎えて「GENKI」は勢いよく船出した。
 当時、「GENKI」が所属していたのは比較的大手の事務所で、デビュー直後から主に一平のルックスと存在感を売りにした戦略は、メンバー全体の実力というしっかりとした土台の上にあって大成功といえた。
 だが三年契約が終わりに近づきつつある頃、メンバーは事務所からの独立を画策し始めた。
 事務所のあくまでも一平のルックスやカリスマ性を重点的に売るという、一平とそのバックバンド的な扱いにメンバーの中で次第に軋轢がうまれていたからだ。
 それはギャラ的にもはっきりと表れていたし、どうやら事務所側はそれでバックバンドが脱退したとしても、代わりのバックバンドを補充して一平をタレント、俳優的にも売り出そうという路線へ仕向けようとしていた。
 これに嫌気がさしていたのは当の一平だ。
 寄らば喰う肉食系の典型のような一平に、次から次へと女を与え、贅沢をさせ、いつもながらのああしろこうしろには揉み手をしてその望みを叶えてやることで、事務所は一平を操っていた。
 いや操っているつもりになっていた。
 だが、もともと自己中、自由奔放なだけの一平が、いつまでも事務所の言いなりになっているわけはなく、実際、最近一平の彼女と大きくマスコミを騒がせた売れっ子タレントは事務所の意向とは関係なく勝手にくっついて来た他の事務所の所属で、いくら事務所の所長やらマネージャやらが別の女を与えようとしたところで、一平にとってはどうでもよかった。
 しかしいい加減、そんな事務所の思惑や干渉をさすがに一平もうざったく感じ始め、決定打は事務所側が音楽路線云々と口にしたことだった。
「おい、みっちゃん、事務所辞めるぞ」
 事務所側に対して不快そうな目を向けただけで、昔のように怒鳴りつけたりしなかったのは、ひとえに、社会人として仕事をしている以上、暴力暴言は一切禁止だからな、と日々みっちゃんこと光彦が言い聞かせてきた賜にあった。


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