真夏の危険地帯8

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 部屋でシャワーを浴びると、一平に指定されたバーラウンジで生ハムやチキンのサラダ、それにビールで軽く夕食にして、ソルティドッグを呑みながら元気はキラキラと輝く横浜の街を見おろした。
「何か久しぶりだな、この都会って雰囲気」
 すると後ろからポンと肩を叩かれ、「世の中を騒がせて消えた謎のギタリストがなんつう陳腐な台詞だ」という声に、元気は、「遅いぞ」と笑う。
「素直な感想を述べただけだろ。待て、将清、何だその謎のギタリストだの世の中騒がせただのって」
 隣に座ったのはいかにも都会的なイケメン、その隣には「久しぶり」と笑うちょっとベビーフェイス、とはいえスーツが板についている。
「当の本人が何言ってる、俺らまでだまくらかそうなんて思ってるんじゃないだろうな?」
「すごかったみたいじゃないか、今夜のライブ」
「え、何で知ってんの? 優作まで」
 訝しげに元気は二人の友人の顔を交互に見た。
 二人は大学の同期で、卒業後もちょこちょこ連絡を取り合っている友達だ。
 二人とも同じ大手出版社に勤務しており、毛利将清はスポーツ誌、江川優作は美術誌の編集部に在籍している。
「お前、田舎にこもってるうちに、テクノロジーの威力まで忘れちまったのか?」
「とっくにネットで流れてるぜ、知ってるやつはすぐお前だってわかるだろ」
 優作は自分の携帯の画面を元気に見せた。
 そこには確かにたったさっきのライブの様子が映し出されている。
 元気は天を仰いだ。
「くっそ、こういうのってみっちゃん、わざとライブ撮影容認しているっぽいぞ」
「ああ、うまく利用しているな」
 将清が頷いた。
「それよか、これどうすんだよ、こっそりじゃなくなってんじゃん」
 全くこれでは、内緒で出たつもりだったのに元気のことを知っている人間なら誰にでもわかってしまうだろう。


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