花のふる日は 1

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       Act 1

 テレビをつけると、ニュース番組では桜の開花予想をやっていた。
「ほんま、日本人は桜、好きやな」
 大学近くの喫茶店で編集者との打ち合わせを済ませ、夜九時過ぎに部屋に戻ってきた小林千雪は、キッチンのテーブルの上にコンビニで買ってきた弁当を広げながらポツリと呟いた。
 仕事に追われて二十四時間でも足りないような日々を過ごしている時はその存在すら忘れてしまうこともあるテレビだが、たまにこんな、仕事も一段落、いつもはうるさくつきまとう京助もいないような夜は、何を見るともなくテレビをつけている。
 六年前、東京に出てきてしばらくは、物珍しさや探究心であちこち出掛けたりして忘れていたが、父親にも研二にも、一人でやっていける、などと宣言したものの、ふと一人でいることが恐ろしく寂しいことに気づいた。
 そこで初めて自分がひどく寂しがりやで、今まで父親や研二はもちろん、たくさんの友達や近所の人に囲まれていたからこそやってこられたのだと、千雪はあらためて悟った。
 確かに、ボサボサ頭に黒渕メガネ、よれよれのジャージというようないでたちのお陰で、中学高校と女の子に追い回されたり、いや、男にまで妙な目つきで見られたり、後をつけられたりという、研二がいてくれたからおそらくそれでも何割減だったかもなのだが、金輪際もうゴメンな状況は免れた。
 だがその代わり、今度は人が寄り付かない。
 外見というのがそれほど人間関係を左右するものだと痛感した。
 ともあれ、気づいたらそういう状態で、その頃千雪の周りには誰もいなかった。
 東京に出てきた同級生も何人かいたはずだが、みんな新しい生活を満喫するのに忙しいのか、誰からも、高校の時は何のかのと声をかけてきたあの三田村さえ、うんともすんともいってこない。


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