氷花-02

– ACT 1

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 まさか自分の小説が賞を取って、ベストセラーになったり、あまつさえそのダサダサの風貌が勝手に性格づけされて一人歩きし、一気にマスコミによって全国的に知られるようになるとは夢にも思わなかった。
 上も下も数年以内に母校である祇園高校からのT大生がいなかったのは幸いだったのか、京都の菊子や江美子に聞いた話によると、卒業して以来顔を合わせていないクラスメイトの間では、千雪は急激に変貌したという噂になっているらしい。
 千雪をその風貌ごと気に入っているという佐久間は、口を開かなければ自分はなかなかイケメンの部類なのだが、十二分に変人の部類なのかもしれない。
「でかい声出すなや」
 千雪は眉を顰めて佐久間の向かいに座る。
「そうかて、先輩わからんかしれんと思て。なんや、先輩、また小食やな。せめて天ぷらうどんにしやはったら?」
「俺が何食おうとお前に関係あれへんわ」
「あかんがな、ただでさえ細いのに、ほな、出血大サービスや」
 ほい、と佐久間は自分が食べていた天丼のえび天をひとつ千雪のうどんの上に載せた。
「何すんね! 今日はあっさりしたもん……」
「遠慮はいりまへんよって、ビシバシ食べて食べて」
「人の言うこと聞け!」
「はあ?」
 ニカニカ笑う佐久間に、千雪はひとつため息をおとす。
 千雪の怒りもどこ吹く風の佐久間は味噌汁をすすり、大盛天丼をがつがつと平らげていく。


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