かぜをいたみ 12

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「何を!! このやろ!」
 肩を揺さ振られ、いきなりガンと壁に頭を打ちつけられ、はずみで千雪は床に倒れた。
 その時、さっとドアが開いた。
「てめー!! つまらねー言い掛り付けやがって!! 平岩か、てめー!! このやろー!!」
 男に殴りかかったのは、何と大澤流だった。
 体格も腕っ節も流の方が強い。
 平岩と呼ばれた男は、殴られて千雪の横に転がった。
「センセーは何にもタッチしてねーんだって、聞いただろうが!! てめー、文句なら工藤にいいな!! もっとも折角実力があっても、センセを脅すようなことして、てめー、逆に安西の価値落としやがったな!!」
 途端、平岩は青ざめた。
 そして痛みを押さえてまだ座り込んでいた千雪の前にガバと土下座する。
「も、申し訳ありません!! 安西には何の関係もないんです!! これは俺の独断でやったことで! 俺はどうなってもかまいません!! 安西には…!!」
「ええからもう行きや!!」
 思いも寄らぬ展開で、不覚にも倒されてしまった自分にも千雪は苛ついて、頭を抑えたまま言った。
「どうか、安西には関係ないんです!!」
「わかった言うてるやろ! もう行け……て……」
 あたふたと平岩はトイレから出て行った。
「センセ、おい、大丈夫か? 頭打ったのか?」
 流は手を差し出そうとして、傍に眼鏡が落ちているのに気づいて拾いあげる。
 幸いにも壊れていない。
 流は頭を押さえているのが確かにさっき会ったばかりの小林千雪であることはわかっていたのだが、何かしらの違和感を持って、目をきつく閉じたままの千雪の手を引いて立ち上がらせる。
「おい、大丈夫か? 医者行くか?」
「あ、平気や……もう」
 千雪は目を開け、そこにじっと自分の顔を覗き込んでいる流の目と出くわした。
 流の手にあるのが自分の眼鏡だということも瞬時に理解した。
 互いに言葉がないまま、流はまだ千雪を凝視している。
 千雪は心の中で舌打ちする。
 こんな状況は予想していなかった。
「まっさか、こーゆーカラクリとは……お天道さまでもご存じないと……」
 流はニヤリと笑う。
「あんたの声、どっかで聞いたと思ってたんだ」
 その科白は、あのクラブでのことはしっかり覚えているぞ、という意味合いを含んでいる。

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