かぜをいたみ 2

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「待てよ、浩美。これ、俺が着るん? もうちょっと地味な方がええんちゃう?」
 アルマーニのスーツを押しつけられた千雪は思い切り眉をひそめる。
「それでも地味な方ですよ。せっかくのTVだし、このくらい平気ですよ。ポール・スミスとかでもいいと思うんだけど」
 明るいブルーグレイのスーツだ。
「千雪さん、いつももっとカッコいい、カラフルなの着てるのに」
 匠がにこにこと笑いながら口を挟む。
 匠の着ている物はイタリアンブランドだが、もう少しラフな感じだ。
 仕方なく千雪は浩美の言うがまま、仕方なさそうにそのスーツを着た。
 面白いことに浩美の手にかかると、いつものザンバラ髪すら芸術的になるようだ。
「そーだ、どうせなら、チラッと千雪さん本モノが出るっての、どうです? 小林千雪っての隠して」
 匠が提案する。
「冗談」
 一言で一刀両断されて、匠はちぇと肩をすくめてみせる。
 録画撮りは、千雪の方は一日のみで済みそうだった。
 秋に放映予定のこのドキュメンタリーは、青山プロダクション社長であり、敏腕プロデューサーでもある工藤高広プロデュースによるNTVの番組で、日本画家原夏緒を特集するものだ。
 匠が番組で取り上げる原夏緒の絵について、ここでは彼女の息子である小林千雪に語らせることになっていた。
 ミステリー作家としてだけでなく、警視庁に協力してこれまで幾度となく難事件解決に貢献し、そちらの方が有名になってしまったせいで、千雪はテレビ出演など時折依頼されることもある。
 今までは一切受けつけなかったのだが、工藤からの依頼でもあり、しかも母原夏緒の番組とあっては、千雪としても無下に断るわけにもいかなかった。
 始めはちょっとコメントのみという話だったが、匠の意見で、匠の質問に答える千雪、というカットも入ることになった。
 さらに、何点かの絵について千雪がコメントするカットも予定より撮影が長くなった。
 U美術館にある夏緒の数点の絵の中のひとつに、向日葵と子供たちを題材にした80号がある。
 子供たちの表情が豊かで、沢山の向日葵に囲まれた清々しい空気が感じられる絵だ。
 小学校の四年生の頃だったと、千雪は思い起こす。
 描かれているのは千雪と、そして研二だ。
 カブト虫と無心に遊ぶ笑顔が可愛い。
 あのいつもの仏頂面を思い浮かべて千雪は苦笑いする。
 それをじっと見ているうちに胸が痛くなった。

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