かぜをいたみ 3

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 撮影が終わると既に夜の十時を回っていた。
 美術館もその日は休館で貸切状態だが、弁当などは出たものの、浩美も久しぶりの東京だと騒いでいるし、工藤が六本木あたりに繰り出そうと言う。
「あ、けど、俺、迎えにきてもらう事になってるんです」
 匠の発言に、えっ、と千雪は振り返る。
「ここにか? 運転手なんかいたのか?」
 工藤が匠を見下ろしながら聞いた。
「友人です。十時頃には終わるって言っておいたから、待ってるかも」
「じゃ、そいつも一緒に行きゃいいじゃないか」
 千雪は咄嗟に研二に違いないと思う。
 会えるのは嬉しいが、何だかひどく切ない。
 工藤はスタッフに解散を告げ、浩美、匠と千雪を伴って駐車場に向かった。
 駐車場には千雪にも見覚えのあるグレイのランドクルーザーが停まっており、彼らが近付くと研二が車から降りて姿を現した。
「研二さん、どうもありがとう。待ったでしょう?」
 匠が研二に駆け寄った。
工藤は外灯の下の大きな男を見つめた。
「終わったんか?」
「ええ。工藤さんがこれから六本木に繰り出そうって言ってるんだけど、研二さんも行こうよ」
 研二は工藤に顔を向ける。
「あ、こちらが工藤さん。青山プロダクションの。工藤さん、黒岩研二さんです」
 研二は、どうも、と、ちょっと頭を下げる。そして千雪に視線を移し、「よう」と言った。千雪も「おう」と返す。
「知り合いか?」
 匠から話を聞かされていた男だと、その時工藤は気づいた。
 大柄な体格だけでない威圧感のある雰囲気に興味を持った。
「高校の同級生です」
 千雪は答えた。
「ほう? すると、何だ、江美ちゃん、菊ちゃんのお仲間か?」
 工藤は研二を振り返った。
「はあ」
「ふーん、それが、匠のダチで?」
「近くに住んでるんで、たまたま」
 匠がニコニコと答える。
「研二、小説の映画やなんかで随分お世話になっとるんや、工藤さんには。この人はな、スタイリストの愛川浩美さん」
 千雪は研二に工藤や浩美を紹介するが、目いっぱい幸せそうな匠の笑顔が何だか面白くない。

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