かぜをいたみ 30

Novel ◆ 京助x千雪Top ◆ back ◆ next

——————————————————————————–
 京助が風呂から上がる頃、カウチで千雪はすっかり眠ってしまっていた。
 再び目が覚めたのは、京助にベッドの中で抱き込まれたからだった。
 ゆっくり、執拗に、京助は千雪を抱いた。
 いつにもまして執拗に責め立てる京助に、千雪は声を上げずにはいられない。千雪の美しい肌に花が咲くように、見る間に愛された証が付けられていく。
 半分眠っていた千雪が散々身体中を弄られて、火が付いた。声を上げるのすら押さえることができない。
「京……あっ……」
 千雪はその滾りを受け入れて喘ぐ。
「工藤が声をかけりゃ、すぐにのこのこ出向くし、まさかあの突っ掛かり坊やでも銜え込む気だったのか?」
「アホ……何……言うて……」
「それとも工藤やらご学友やらとまた旧交暖めようってつもりだったのか?」
 工藤が千雪を諦めたとは思えない。それなのに、ホイホイやつになつきやがって。
 京助の中でまた怒りのボルテージが上がる。
「お前と同じにせんといてんか……俺は……っ!!」
 千雪は激しい情のうねりに悲鳴を上げ、京助の首筋にしがみつく。あとはもう二人で夢中になり、やがてどちらともなく果てる。
 一瞬遠退いた意識が戻ってきても、なかなか呼吸は整わない。
 これ以上の幸せを望む方がどうかしている。
 愛する人とこうして一緒にいられるというのに。
 だが、千雪は心の隅にある哀しみを未だ拭いきれないでいる。
 生きていくということは、喜びの数が増えると同様に哀しみもまた増えずにはいないのだ。
 その哀しみの一つの断片は研二だ。
 研二が、千雪の幸せをこそ自分の幸せとしてきたように、千雪にとっても研二の幸せこそ自分の幸せだと思う。
 研二の幸せが無い限り、千雪にとっての幸せのジグゾーパズルは未完のままだ。
 そうして京助がこれ以上もない愛を注いでいるとしても、千雪の心の片隅は研二がいるのだ。
 それは、千雪が言わずとも、京助にもよくわかっていた。
 例え、研二の妻だった女が謀った結婚だったとしても、彼は誠実に家庭を築こうとしていたはずだ。
 研二が子どもを愛していたことも事実だし、妻を彼なりに愛していたことも、また事実なのだ。
 だが、研二の本当に愛する誰かへの尽きることのない嫉妬、自分の謀った偽物の家庭や研二への呵責の念に、妻の方が押しつぶされてしまった。

——————————————————————————–

Novel ◆ 京助x千雪Top ◆ back ◆ next


にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ

ようこそ、お立ち寄り有難うございます。お気楽ハピエンBL小説です。