花を追い10

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 は?
 しばし沈黙があった。
「忙し過ぎるんでお前は、何か勘違いしてるんだ。同じ仕事を同じ環境で数か月一緒にいるとそう思い込むこともある」
 静かに工藤が言った。
「違う! 俺、本気で………でも、やっぱ俺、男だし」
 必死の訴えだと、良太には感じられた。
「お前の本気度までこき下ろすつもりはない。あいにく、こんなオッサンのどこがいいのかわからんが、よく告られるんだ男にも。だが、悪いがお前の気持ちには応えられない」
 工藤の言葉は本谷に向けられているはずだったが、何故か良太の心にもズシリと響いた。
「そう……ですか……すみません……」
「謝ることはない。俺は明日からいないが、そういう一生懸命さをドラマでいかすんだな」
「……俺……」
 本谷が何か言おうとした時、ドアが開いた。
「あ、いたいた、本谷くん、工藤さんも、監督がなんか呼んでますよ。もう今日の撮影は終わったんですよね~」
 明らかに不本意そうなその声はどうやら本谷のマネージャーらしいかった。
 工藤と本谷も出て行き、トイレはシーンと静まり返る。
 それでも少しまってから、息を殺していた良太はこそっと個室から出てきてようやく大きく息を吐いた。
「よし、いないな」
 良太はトイレから出る時も辺りを見回して、素早く飛び出すと、とりあえず駐車場へと階段を駆け下りた。
 別に走らなくてもよかったし、駐車場まで戻る必要もなかったのだが、何となく来てしまったので、仕方なく車のロックを外し、運転席に乗り込むと、肩に引っ掛けていたリュックをナビシートに放る。
 途端、マナーモードにしている携帯が震えてブーブーと音をたてたので、思わずびくりと肩を揺らした。
「はい、お疲れ様です」
 工藤である。


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