花を追い11

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 極力動揺を抑えて何事もなかったかのように、今駐車場にいると答えると、工藤がすぐ降りていく、と言った。
「そういや、マナーモードにしててよかった……」
 トイレのあのシーンで、誰もいないはずの個室で携帯が鳴ったらと思うと首筋がヒヤリとする。
 本谷も当然他に人がいるなんて思っていなかったから、あんなところで告白大会を始めてしまったのだろうし。
 本谷和正は確か二十五歳、M大を卒業して営業マンをしていたところ、営業先がたまたま今の芸能プロで逆にスカウトされたという話だ。
 何せイケメンで身長も高くプロポーションもいいから雑誌のモデルかなんかで中高生の間で火がついて、アイドル路線でCMやドラマのチョイ役などを経てあっという間にブレイクした。
 見るからに軽いチャラ男だと思っていた良太だが、少し、見方が変わったかも知れない。
「好きです、か。ちょうど何年か前、似たようなことを工藤にぶっちゃけたやつがいたよな。よく告られるんだ男にも、か」
 あんなオヤジに入れあげるなんて良太くらいよなんて、アスカさん言ってたけど、俺だけじゃないみたいだぜ。
 お前の気持ちには応えられない、か。
 言われたのは本谷なのに、何だか自分が言われたみたいに、胸の辺りがぎゅっときつかった。
 なんか、俺も、よく告られる男、の一人ってことかよ。
「俺には好きなヤツがいるとか何とか、本谷に断る言い訳にしても言っとけばよかったのに、何だよ、バカやろ!」
 良太はそれこそ周りに聞いている者などいないだろうとばかり、声を大にして喚く。
 もしほんとに好きな相手がいるのなら、はっきりそう言うのではないか。
 ぐらつく思いは今に始まったことではないのだが。


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