花を追い2

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 最近息子は大学を卒業して独立したようで、今は大学に通う娘と二人、のんびり暮らしている。
 良太にとってそんな鈴木さんは、出張などのおり、猫の面倒を見てくれる有難い存在だ。
 幸か不幸か、良太は会社から徒歩数分のこの自社ビル七階にある『社員寮』に住んでいるため、鈴木さんも猫の世話をしてから帰途につくことができるというわけだ。
 それだけでなく、何くれとなく良太を気遣ってくれている。
 良太は日頃の感謝とともに、まだ辛そうな鈴木さんのデスクに、せめて淹れたてのコーヒーを置いた。
「ありがとう。でもこれからお出かけでしょ。ご自分の仕事、やって下さいな」
 確かにもうそろそろ出かけなくてはならない時間がきていた。
「あ、はい、内野先生との打ち合わせ、やっぱ大学まで一時間弱はかかるよな、飛ばしても」
 内野孝蔵は八王子にある東京科学大学の動物行動学の准教授で、MBCで進行中のプロジェクト「レッドデータアニマルズ-自然からの警告」では番組の監修を依頼している。
 以前、下柳らがアフリカに立つ前の打ち合わせで、「視聴者に自然の本当の声を伝えるためには、予定されている三人のナビゲーターの方々にも、どこかで生の実態を見ていただくことが必要だ」などと良太はつい口を滑らせてしまい、カメラマンの有吉には、「ジャングルの奥地なんかへ、タレントなんか連れて行けるか」とド素人が、と一蹴された。
 確かに旅費からセキュリティの確保から金がかかるし、その前に、タレントのスケジュールを合わせること自体難しく、良太も有吉に白旗をあげるのは悔しかったが仕方ないかと思っていた。
 ところが、たまたま監修の打診で内野に会いに行ったところ、内野は北極圏からアフリカまで何度となく歩いていて、監修なら自分の目で見たいのだが、と言い出したのだ。
 早速工藤や下柳に話したところ、むしろ願ってもないということで、四月末の二度目のアフリカ行きに同行してもらうことになった。


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