花を追い5

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 近くにある内野が好きだという和食の店には個室もあるということで良太はあらかじめ予約を入れておいた。
 内野は同じ世界の秘境を闊歩する男でも戦場を潜り抜けてきたカメラマンの有吉のような頑健な大男とは違い、ひょろっとタイプの学者肌で、言葉遣いも優しかったし、何より気遣いがあった。
「いやあ、わざわざ予約していただいてすみません」
 年齢は工藤より少し上あたり、動物行動学を選ぶだけあって、犬猫鳥何でも好きで、自宅でも何匹かいるという内野は、気になる動物の話を始めると止まらない。
「ハハハ、好きで昔から何でも拾ってくるのはいいんだけど、結局世話をするのは家にいない僕より母だったりして、しょっちゅう文句言われてますよ」
 動物に夢中になると周りを忘れるせいで何度も振られ、独身のため、近所では変人扱いなのだそうだ。
「でも先生、学生にはすごく慕われてますよね」
 彼のゼミはいつも定員オーバーになるほどで、講義も真面目に聞いている学生が多いのをたまたま覗いた良太は見ていた。
「ありがたいよねぇ」
 今回一カ月の長期行程のため、講義にも支障をきたすことになると心配したのだが、どうやら毎日とはいかないがWEBで講義をするという。
 学生にとってはむしろ現地からのリアルな講義とあれば願ってもないところだろう。
 この話には案の定有吉がそんな悠長なと文句を入れてきたが、以前も北極圏からやりましたよ、という内野ののほほんとした回答に有吉が苦虫を噛んだような顔をしていたので、良太はちょっと留飲を下げたものだ。
 行程やフライトの打ち合わせを終えて内野と別れると、良太は八王子を後にした。
 高速に乗った頃、ハンズフリーにしている携帯が鳴った。


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