ほんの少し届かない 21

back next  top  Novels


「どうも、ひとみさん、おや、ヤギさんじゃないすか」
「おう、沢村、先にやってるぞ」
「なんすか、それ、焼酎?」
 沢村は早速、下柳と同じものをもらって二人が座るソファの向かいに陣取る。
 クリスマスパーティってよりオヤジ大会になりそ…
 なんだかな、と良太はワインをもらい、沢村の隣に腰をおろした。
「そういや、かおりちゃん、今頃白馬だよな」
「え、何で知ってんだよ」
 良太は驚いて沢村を振り返る。
「かおりちゃんから、こないだ、肇とつき合うことになったから、良太のことよろしくって」
「はああ? 何だよ、俺のことよろしくってのは」
「沢村くんなら許してもいいって、お墨付きが出たぞ」
「だから、何だよ、それ~、お前何言ったんだよ、かおりちゃんに」
「まあまあ」
 焼酎を口にしながら沢村はニヤニヤ笑うだけだ。
「どうぞ、沢村くんからいただいた『酒盗人』です」
 藤堂が皿と箸を携えてテーブルに置いた。
 マイセンに盛りつけられた『酒盗人』というのもあまり眼にすることはないだろう。
『越の寒梅』も栓が抜かれ、ガールフレンドと一緒にきていたロックヴォーカリストのキョウヤと話していた佐々木や直子も興味深深でやってくるし、場は一気にオヤジたちの酒盛りの様相を呈してくる。
 悠の友達の高津や悦子も加わり、イブの夜は深夜に近づいて一層賑やかになった。
 藤堂がひとみの持ってきたヴィンテージ物のワインをそろそろ開けようかという頃、ドアフォンのランプが赤くなった。
「はい、須永さん? どうぞ」
 マネージャーの須永ともう一人くるからと、さっきひとみに言われていた藤堂は、愛想よくセキュリティを解除する。
 リビングの大時計があと数分で午前零時を告げようとしていた。
「わあ、雪」
 直子が立ち上がった。
「ウソ」
 リビングいっぱいに広がる大きな窓から見える夜景にふわふわと雪が落ちていく。
 部屋の中が柔らかいキャンドルライトだけなので、雪の白さを際立たせている。
「工藤さんじゃないですか」
 ぼんやり雪に見とれていた良太は、えっと振り返る。
「もう一人なんて言うからどなたかと思いましたよ。ようこそ」
 藤堂に案内されて入っていたのは、須永と苦々しい顔を崩そうともしない工藤だった。
「工藤さん、お帰りなさい」
 良太は慌てて工藤のもとに駆け寄る。
 びっくりした。来るなんて思ってなかったし……
「…………でも、何で須永さんと?」
 良太の頭の中に?マークが飛び交う。
 だが、それよりもシャンパンを飲んだ上に、日本酒まで味見をさせられてちょっといい気分な良太は、工藤が来たのが嬉しい。
「よお、こっち座れよ、せっかくきたんだ」
 こちらもすっかりいい機嫌の下柳が工藤を手招きする。
「ヤギ……もうできあがってるのか」
「どうぞこちらへ」
 浩輔がコートを受け取って、ひとみたちの方へ工藤を案内する。
「ひとみさんからいただいたワイン、開けますね」
 藤堂はソムリエよろしく澱を舞い上がらせないように静かに栓を抜いてグラスに注ぐ。
「熟成されたいい香りだ」
 佐々木が言った。
「ほんと、美味しい」
 ひとみもご満悦だ。
「カビくさいんじゃねーの?」
 下柳が恐る恐る口をつける。


back next  top  Novels


にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ

ようこそ、お立ち寄り有難うございます。お気楽ハピエンBL小説です。