限りなく傲慢なキス 2

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 一月も終盤に差し掛かり、日本列島は猛烈な寒波に覆われていた。
 昨日仙台のロケハンに同行し、今日の午後になって一足先に戻ってきた広瀬良太は、新幹線を降りた途端、ビュウとぶつかってきた冷たい風に思わず肩を竦めた。
 雪こそ降ってはいないが、強いビル風はともすると雪より身体を凍えさせる。
「お帰りなさい。どうでした? 郡山」
 オフィスのドアを開けると、柔らかな鈴木さんの言葉が良太を出迎えてくれた。
「ただいま。寒かったぁ。こないだみたいに大雪じゃなかったけどね。あ、これ、お土産です」
「あら、ありがとう! あとで佐々木さんやアスカさんがいらしたらお出ししましょうね」
 乃木坂に瀟洒な自社ビルを持つ青山プロダクション。
 社長の工藤高広は、民放のキー局であるMBC時代から鬼の工藤と異名を持つ敏腕プロデューサーとして名を馳せ、工藤が関わると必ずと言っていいほど当たるし俳優もブレイクすると言われているが、タレントの起用に関しては実力のないものはスッパリ切り捨てる冷酷非情な男として業界では知られている。
 会社は小さいながらもこの不景気なご時勢にあって右肩上がりだが、万年人手不足に悩まされ、タレントはまだしも、社長の工藤と今やその懐刀として周囲も認めている良太は、仕事に忙殺される毎日を送っている。
 社長の工藤が広域暴力団組長の甥というダーティな出自がその人手不足の理由であり、良太が入る四年程前までは、工藤の母校あたりに今時の新入社員としては破格の給料を提示して募集を掛けていたのだが、面接で工藤が、組長の甥云々を口にすると、大抵回れ右をして帰ってしまう。
 本人は、政治家と同じくらいヤクザを嫌っているのだが。


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