みんな、はっぴぃ!11

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「ステキな名前ですねー、千雪さんか。そういや、小林千雪って、あの有名なミステリー作家と同姓同名ですねー。ほら、あの人、何とかって難しい名前の人と組んで、警察に協力していくつか難事件も解決してるってゆう。俺、あの作家の小説に出てくる老弁護士が好きなんですよぉ。知ってます? 藤堂さん」
 一瞬静まり返った車内に、のほほんとした浩輔の声が和やかに響く。
「プレゼント、このマフラーにしよか、まだ、そんなつこてないし。な、良太」
「千雪さん……」
 こちらも呑気そうに聞かれ、良太は内心頭を抱える。
 うううううう、工藤さん、帰ってきたら、何て言えばいいんだ! 小林千雪の正体、藤堂さんにばれました、なんて!
 黒縁メガネでよれよれの中年推理作家として世の中に知られている小林千雪が、実は女性とも見紛う超のつく美人だと知ったのは、良太が『青山プロダクション』に入社して二年目のことだ。
 小林の作品は映画、TV全て工藤を通して映像化されている。
 さらに、工藤も小林も良太にとってみれば学部の先輩にあたるし、事実、良太は小林の講義をとってもいたのだが、よもやその中身がつまり、今自分の隣に座っている見目麗しい関西弁の男だなんて、どうしたら想像できたろう。
 信号で停まっていた車が一斉に動き出し、一瞬固まっていた藤堂は我に帰る。
 その時、小林のポケットで携帯が鳴った。
「あ、すみません、ちょっと失礼」
 小林は携帯を取り出してボタンを押す。
「…京助。まだ、かかりそうか。ほな、しゃーないやん。うん。俺もちょっと用できたよって、慌てんかてええわ」
 京助!
 無理やり、天然な浩輔の言葉を信じ込もうとした藤堂の考えがそのひとことで拒否される。
 京助、って、あの綾小路京助のことか? 法医学部にいる、コースケちゃんが言った難しい名前の小林千雪の相棒…………。
 つまり、世間で知られているあの風貌は隠れ蓑ってことか。
 しかしまた何で隠す?
 藤堂の中でまたしても疑問が広がる。
 あれ? だが、なんで、さっき本名名乗ったんだ? ってか、俺が聞いたんだが………。
「千雪さん」
 良太がボソリと小林に声をかける。
「何?」
「いいんですか? その……」
「ええよ。それよか楽しそうやん。なんか。どんなメンバーなん?」
「『PLUG‐IN』はうちとよく一緒に仕事してる代理店で、藤堂さんとコースケさん、代表の河崎さんと、営業の三浦さんの四人の会社なんですが、そこの仕事関係の人とか、友人、知人ですよ。去年はアスカさんもきたんだけど」
「まて…彼女もくるんか?」
 小林はちょっと眉をひそめる。
「いや、今、彼女沖縄ロケ行ってるので大丈夫です」
「え、アスカさん、こられないんですか? 今年は」
 するり、と浩輔が聞いてくる。
「ええ、ドラマの仕事があって」
 良太が答える。
「そうか、彼女が来るとにぎやかなのに」
「…にぎやか過ぎるんやし…」
 また、小林がボソリ。
 お互いにアスカに引っ掻き回されているので、良太もくっくっと笑った。
 


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