みんな、はっぴぃ!6

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  ACT 3
 
 
 オフィスへの階段を上りかけて、藤堂は近くのうまいパン屋が賑わっているのを目にした。
「コースケちゃんも食べるかな」
 藤堂はパン屋でサンドイッチやらピロシキやら甘いのやらをいくつか買うと、いそいそとまた会社に向かう。
「わー! 今、メシどーしよーって思ってたとこなんですぅーー! コーヒーいれますねー」
 童顔の後輩は、相変わらず素直で可愛い。
 しかし彼は大手広告代理店英報堂時代から、彼の上司であり、藤堂の悪友でもある河崎とは、紆余曲折あったものの、今はめでたくその河崎の大切な同居人となっている。
 『PLUG‐IN』は、元大手広告代理店英報堂のトップAEだった河崎と藤堂が独立、出資して興した会社である。
 代表取締役の河崎達也、専務取締役の藤堂、それにデザイナーの西口浩輔、そして営業の三浦章太郎の四人からなる小規模広告代理店だ。
 とはいえ、出だしこそさすがにそう簡単に仕事が回るわけもなく厳しいものだったが、一年半が過ぎ、年商数百億というところまできている。
 浩輔はかつて英報堂の河崎の下で営業として勤務していたのだが、やがてデザイナーとしての仕事を選んだ。
 表参道の大通りに面して建つこ洒落た四階建てのビル。
 銀色の外壁は少し湾曲し、螺旋階段を上がった二階が『PLUG‐IN』のオフィスになっている。
 一階は駐車場で、二台のスペースがある。
 ビルのオーナーは河崎で、三、四階は河崎が姉の美保子にギャラリーとして貸している。
 会社の経理、プロデュース、マネージメントその他を切りまわす、会社にとっては重要なマーケッターでもある藤堂は、お嬢様育ちの社長である美保子をサポートするべく、ギャラリー『銀河』の役員にも名前を連ねている。
 悠と藤堂の出会いは、この『銀河』だ。
 彼がこのギャラリーで作品展を開いたのだ。
 その時に悠が描いたもののいくつかが、今藤堂のマンションに飾られている絵である。
「うまーい!」
 浩輔が美味しそうに食べているのを見ると、藤堂の気持ちも幾分か和らぐ。
「そういえば、すみません、パーティの準備、悠くんだけで大変だし、俺、仕事一段落ついたら、手伝いに行きますから」
「ああ、いや、大丈夫だろう。悠の友達がきてくれてやってくれてるんだ」
「というと、美大の?」
「そう。アーティストたちは作品ができるまでは気難しいからね。」
「なるほど。でも料理の準備とかあるし、とりあえず、あとで顔出しますよ」
「だったら、一緒に行こう。俺もカップ麺のCF撮りが延期になったから、空いてるし。ちょっと調べものがあるが、コースケちゃんのスケジュールに合わせるよ」
 藤堂はサンドイッチを少しつまむと、自分のデスクへと向う。
 ノートを立ち上げ、とりあえず次の仕事の準備を始めるが、藤堂の手はいつしか止まっていた。
 『お前、甘く見られてるだけじゃねーの? いいパトロンってとこだろ、せいぜい。今時のガキの心理なんざ』


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