好きなのに 102

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 もちろん、最初から佐々木を連れ出すつもりでいた。
「酒、飲んでるんやないのか?」
「グラス持ってただけだ」
 沢村は門まで来ると、車を降りて開閉パネルを探して門を開けた。
 さすがにあんな大騒ぎをして出てきて、今更戻れるものではないだろうと、佐々木も腹をくくった。
 力ずくで別荘の外に連れ出され、沢村の車に押し込められた時は、腹が立って車を降りてやるとさえ思った佐々木だが、少し頭をクールダウンさせて考えてみると、沢村におかしな誤解をさせてしまったのには自分も責任があるかもしれないと思ったのだ。
 十分も走れば沢村の山荘に着いた。
 母方の祖父から沢村が譲り受けたこの別荘は天井が高く空間が大きい、欧風建築の3LDKで、球界に入った年に一室をトレーニングルームに改造したものの、たまにしか使っていなかったが、佐々木を連れてきて以来、居心地がよくなった気がしていた。
 佐々木をリビングに通すとエアコンを入れ、面倒くさそうにジャケットを脱ぎ捨てた沢村はそのままキッチンに行った。
 ソファに腰を降ろした佐々木は、沢村にも自分にもあらためて呆れていた。
 しかし、何でこういう展開になるんや……
 冷蔵庫から焼酎を持ってきた沢村はグラスを二つ用意して、佐々木の横に座り、焼酎を開けた。
 なかなかどちらからとも言葉がなかった。
 カパカパと焼酎で二つのグラスを満たすと、沢村はその一つを取ってゴクゴクと飲み干し、ふう、と大きく息をついた。


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