好きなのに 121

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 仕方なく沢村の後から佐々木が入っていくと、「周ちゃん!」と友香が嬉しそうに立ち上がった。
「どう? 沢山入った?」
「うん、思ったより一杯入ってくれた」
「そらよかった」
 佐々木は一通り見回して、今のところ入ってすぐの明るい花の絵以外、売れたものはないのを確かめる。
 四十万では結局ギャラリーの使用料だけでほぼ終わってしまうだろう。
 実家にいる限り、それこそ佐々木の家よりよほど裕福だし、経済的に心配はないだろうが、またスペインに行くとなると、資金は必要ではないだろうか。
 それに母親が病気だというし、と、佐々木は老婆心で考えてしまう。
「評論家の人とかもいろいろ来て、いろいろ言われたけどね。あ、でも向井先生が武藤先生とか連れてきてくれて、懐かしかった」
「ほんま? あの偏屈な髭のおっさんやろ?」
「そう、今もやっぱり偏屈だったんだよぉ」
 言いながら友香はちょうどサングラスを外して、絵をじっと見る沢村に目をやった。
「あの! ひょっとして、関西タイガースの沢村選手ですかぁ?」
 沢村も、佐々木もちょっと驚いて友香を見た。
「え、トモちゃん知ってるの?」
「うん、トモのうち、一家して野球ファンで、おとうさんがタイガースファンなんだ。あ、周ちゃん、野球とか、知らなかったよねぇ」
「そう、佐々木さん、野球とか全然知らなかったよな」
 沢村が言うと、友香が驚いて二人をかわるがわる見つめた。
「え、あの、お知り合い?」
「あ、ああ、友人なんや。こちら森野友香さん」


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