好きなのに 20

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 直子は難しげな顔でじっと佐々木を見つめた。
 佐々木の手元には一枚の案内状があった。
 案内状は佐々木が独立したことなど知らない友香からジャスト・エージェンシーの佐々木宛に届いていたものだ。
 森野友香の個展があるとは、以前新進画家の五十嵐悠が教えてくれたが、いざ、案内状が届いてみるとほんの少し躊躇していた。
 決して嫌いで別れたわけではない。
 おそらく友香も同じだろう。
 だが、もう随分時が経った。
 友香も隣に別の誰かがいるかも知れない。
 とっくに吹っ切れたはずだが、本人を目の前にしたらどうだろう。
 少しだけ、その時の自分が怖い気もする。
 俺って、情けないやっちゃなぁ、ほんま………
「ね、あたしも一緒に行っていい? 友香さんの個展に」
 佐々木は直子を振り返った。
「あ、あ、いいよ。だったら、お昼か、それとも早めにオフィス閉めて、ギャラリー行ってからどこかでご飯食べようか? 直ちゃんのリクエストに応じるよ」
 渡りに船のように、佐々木は直子の申し出に乗った。
 また、直ちゃん頼みみたいな感じやなぁ。
 一方、直子は直子で、佐々木が心配だったのだ。
 佐々木の揺らいでいる思いが何となくわかる。
 だからこそそんな時に、別れた奥さんに会ったりして、焼けボックイに火がついたりしたら、沢村っちが可哀相だし、佐々木ちゃんも後悔するって。
 いざとなったら、またあの手よ!
 去年のクリスマスイブのパーティで、思い切り佐々木に抱きついて、沢村の反応を見てやったのだ。
 思ったとおり、沢村は佐々木に夢中だということもわかったし。
 直子としては、佐々木と沢村、すごく愛し合っているのに、色々面倒なことに振り回されて、特に佐々木が素直になれないでいるのが歯がゆいのだった。


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