好きなのに 9

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目の前でガツガツと平らげていく沢村は、どうやらかなり空腹だったに違いない。
とりあえず佐々木はビールをやめてノンアルコールの缶を開けた。
佐々木も空腹を思いだして食べ始めたものの、何やら胸の辺りに詰まったようで箸が進まない。
とにかく日本を代表するスラッガーにこんな無理をさせていいわけがないのだ。
しかも今回、自分のためにさらに無理をさせた。
もくもくと食べ終えると、佐々木は再び時間を確認して、食器を洗う間もなく大きなおかもちに入れる。
「そろそろ出よう」
「そんな慌てなくても大丈夫だって」
「乗り遅れるわけにはいかんやろ。早よ、せい!」
これだから、佐々木には適当にごまかしておこうと思ったのに、と沢村は心の中で溜息をつく。
「あ、ゴミとか食器は管理してくれる人に頼んであるから、置いてて大丈夫」
本当は掃除もして帰りたいくらいな佐々木だったが、沢村を間に合わせることが最優先だと、たったか玄関に向かう。
 沢村も佐々木が怒っているのがわかるので、タブレットを無造作にバッグパックに突っ込み、エアコンや灯りも消して佐々木に続いて玄関を出ると、鍵をかける。
 佐々木は沢村に有無を言わせず運転席に座り、軽井沢の駅まで車を走らせた。
佐々木は黙ったまま沢村の車に乗り、車は間もなく軽井沢の駅に着いた。
サングラスとニット帽で、かろうじて沢村とすぐには気がつかれないかも知れないが、この体格だ、何者だと振り返る者も多い。
「車はどうするんや?」
「それも平気。頼んであるから」


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