好きなのに 98

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    ACT 8

 佐々木の前に、いきなり大きな影が立ちはだかり、すぐに腰を降ろした。
「俺にもお茶、ください」
 佐々木は目の前に座った沢村と目を合わせようともせず、黙って新しい茶碗にお茶を点てはじめた。
 空気を読まなくてちょうどいい浩輔は使った茶碗をキッチンに持って行ったまま戻ってこないし、頼りの直子も気を利かせたのか使った茶碗を持って立ち去った。
 佐々木は、さっきからの沢村を巡る騒ぎの中で、やはり沢村の好きな相手は良太だったのだと知った。
 しかもどうやらアスカや良太の同級生さえ知るところの事実のようだ。
 ただし、沢村の言い分を信用するなら、良太には相手がいて横恋慕していた相手らしい。
 それはいいとしよう。
 だがしかし。
 どうやら明らかに良太とこそこそ連絡を取って無理やりここにやってきたのだ。
 トラベルミステリー並みが聞いて呆れる!
 佐々木は黙ってお茶を飲む沢村の指を見ていた。
 しらじらとした沈黙が二人の周りを包んでいた。
「ごちそうさまでした」
 コトリと茶碗がテーブルに置かれた。
 たったさっきまで、電話をしなければと思っていたはずなのに、唐突に現れた沢村に佐々木は何と言っていいかわからなかった。
 佐々木は茶碗を手元に戻し、茶筅ですすぎながら、いきなりのこの展開に次のリアクションを取りあぐねていた。
「……何とか言ったらどうだよ!」
 佐々木は手を止めた。
「俺とはもう口も聞きたくないってわけかよ!」
 リビング中に聞こえなくても、佐々木はカッとなって顔を上げ、沢村を睨みつけざるを得なかった。


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