ミュンヘンへ行こう ーハンスー 11

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 ハンスがニヤニヤ笑いながら、二人の間に割って入った。
「知ってる」
 フランツはほくそ笑み、ロジァに向き直る。
「お前も、今帰っちまったら、せっかくのメインイベント、見損なうぜ」
 フランツは自信ありげに言い切った。
 ロジァはふと、心配になった。
 まさか俺の名を言うつもりだろうか? でも、アレクセイは認めるはずがない。
 ウソでもそんなことがスターリングに知れたらクビだと思ってるはずだ。
 第一、ゲームだって言っても、俺みてーな、ニューヨークの薄汚いガキが恋人だなんて言ったら、いい物笑いだろう。
 けど、フランツが言おうとしてるのが、俺なんかじゃなく、本当に奴の本命を知ってるのだとしたら? 
 そこまで考えてロジァはズキン、と胸が軋んだ。
 愛してると、アレクセイは言う。
 けれどアレクセイのことを今一つ信じ切れないものがあるのだ。
 だがフランツは無理遣り、ロジァを引っ張って場内へ連れ戻した。
 ホールは騒めいていた。
 酒を片手に笑う、優雅な遊び人たち。
 去年の夏はカルロヴィ・ヴァリで過ごしたが、今年はカンクンがいいな、どこどこの店にダイヤの逸品があって……、誰だれが半年、何とか号のクルーズで……、加えて、車は自分がもらう、いいえ、私がアレクセイに頷かせてみせるわ、そんな科白が飛びかっている。
 こいつらには何でも遊びなんだ。
 恋愛も人の心も遊びの道具モチーフ。
 俺がアレクセイだったら、すっげー困る。
 すっげー悩む。
 もし自分の大切な人がここにいて、そんなゲームに使われたら。
 それにもしも本命ってのがちゃんといるのなら、アレクセイにしたって困るじゃんか。


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