ミュンヘンへ行こう ーハンスー 6

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 とにかく、アレクセイといると誰でも幸せな気分になれる。
 だから人を惹き寄せる。
 その容姿に違わない才と知、そして華やかさとで。
 ハンスは三年前に結婚したが、結局三年しか続かなかった。
 実はその理由はやはりアレクセイなのだ。
 本人には言えないが。
 妻ブリュンヒルデはオーストリアの大きな銀行家の娘で、ジェット族の遊び仲間でアレクセイとも親しかった。
 そうはいっても彼女は中身は身持ちの固い女で、結婚したら遊びは程々に、というのが条件だった。
 彼女はもとより、ハンスはそれを守ったつもりだった。
 子供が二人生まれ、二才の娘と一才になる男の子がいる。
 傍目にも幸せそうであったし、彼自身もいい父親であり、仕事も軌道に乗っていた、筈だった。
 ところが、ブリュンヒルデの方から別れを言い渡された。
 ハンスとしては寝耳に水。
 彼は理由を尋ねた。
「あなたはいい父親で、いい夫だわ。あなたが素敵な人だということは、十年も前から知っている。私はあなたを愛しています。あなたも私を愛してくれたと思う。それなりには。でも、あなたが本当に誰よりも愛しているのは私じゃないわ」
「どういうことだ?」
「あなたが愛してるのはアレクセイよ」
 ハンスは否定することができなかった。
 彼女との結婚に踏み切ったのは、三年前、どうやらアレクセイに特別の相手がいるらしいと感じたことが発端だった。
 ブリュンヒルデはアレクセイと彼がただの友人でないことも知っていた。
 彼らの仲間内ではほぼ公認のようなものだった。
 無論、結婚してからは二人にそういう付き合いは一切なかったこともブリュンヒルデはわかっているはずだ。


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