春の夢 10

back  next  top  Novels


 ハンスはすっかり科学者の顔になってしまったアレクセイに、また自分のチームに参加しないか、としきりと誘う。
「仕事があるからな…それはどうか分からないが…いいものを見せてやるよ。あんたの喜びそうなやつ…」
 アレクセイはそう言いながら、書斎のコンピューターを立ち上げる。そして表れた画面に、ハンスは釘づけになった。
明らかにF1エンジンの設計図である。
アレクセイはいろんな方向から角度を変えて、ハンスに説明した。
「エネルギーを無駄遣いしないシステムだ」
「これは………」
「少ない燃料でかなりなパワーを引き出してくれるはずだ」
「確かにパワフルだ……」
 ハンスは興奮気味に言った。
「あとはギアやブレーキング、タイヤとの折り合いだな」
 と、アレクセイは笑いながら画面を変える。
「大まかなところの完成予想図だ。あんたのところのマシンを想定して組み込んでみた。オイルの調合まで一応計算してある」
 ハンスは息を呑む。
「すごいな、これをどうする気だ?」
「別にどうするところまで考えてはいないさ。計算上でしかないからな、実際には……」
「造らせてくれよ」
 すかさず身を乗り出したハンスは、大手自動車会社の幹部というより、ただの車好きの顔をしていた。
「それはこちらも有り難いが、ただし条件がある」
「いくらでも出す」
「金なんかいらない。ただ、テストは俺にやらせてくれよ。他のドライバーには絶対触らせるな」
「何でだ?」
「下手するとリミッターが効かなくて、エンジンがぶっ壊れる可能性もあるからだ」


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ