春の夢 104

back  next  top  Novels


 アレクセイはグラスやナプキンをテーブルに用意しながら、立ったままのロジァに言った。
 美味そうなボルシチの匂いが部屋中に漂う。
 アレクセイは硬いバケットをナイフで切って皿に並べ、チーズの塊をスライスする。
 その間にもアーニャに食事をやるのを忘れない。
 バターケース、オレンジやアボガドなどを一緒にテーブルに並べ、熱いボルシチを入れた皿を二つトレーに乗せて持ってくる。
 最後に赤ワインを持ってきて、エプロンを取った。
「快気祝いな」
 アレクセイはワインのコルクを抜いた。
 コクコクとグラスに注がれる赤い液体を見つめ、ロジァは胸を切なくする。
 ガードなんかいらない。
「カンパイ」
 アレクセイはやけに陽気だ。
 グラスを持っただけのロジァのグラスに自分のグラスを合わせる。
 そして一口飲むと、ロジァをじっと見つめた。
「どうした? 飲まないのか? 今夜のために買っといたシャトー・ラトゥールだぜ」
 あいつにもそんな風に言うわけだろ?
 ひどく息苦しい。
 でなくてもいろんな女、いるじゃないか。


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ