春の夢 110

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 またロジァの瞳から涙が落ちる。
「…愛してるんだ…」
 アレクセイはロジァの瞼にやさしく唇をあてた。
「死ぬ時は、お前に腕に抱かれて死にたいよ…」
 やっと見付けた俺の帰るべき所。
「…あんたの…」
 ロジァの唇が動く。
「…マシンが燃え上がった時、死んだかと思ったんだぞ…」
 アレクセイの耳にロジァの言葉は暖かく響く。
「こないだだって…俺を…ヒューに押しつけて行っちまったくせに…ここでくたばっても…なんて言いやがったくせに…俺が、どんな思いで…いたか知りもしないくせに…バッキャロ…!!」
 重なった肌から互いの体温を感じ取る。
「ロジァ…悪かったよ…」
 身体が繋がってしまうと、ロジァの頭の中はさらに沸騰しそうになる。
 俺が…ずっと…あんたのこと、好きだって…知ってるくせ…
 心の中の叫びすら、この男の目に晒されているようだ。
「ロジァ……すんげ……熱い……お前ん中……」
 耳元で囁くアレクセイの声が甘い旋律のように、ロジァの身体の中を駆け巡る。
「……っ…! バッキャロ…!」
 ロジァの言葉はアレクセイの唇に飲み込まれる。
 色を帯びた眼差しがロジァを射る。
 この美しい獣に喰われることを、ロジァの身体はひどく悦んでしまう。
 長いプラチナブロンドがロジァを覆う。
「ああっ………」
 声を上げてロジァは片方の腕でアレクセイにしがみついた。
 アレクセイはそんなロジァを力の限り抱き締める。

 こんな可愛い王子に捕まるとは思わなかった。
  
 春もたけなわ、ロジァの腕が治ったら、今度はどこにキャンプに行こうか、ああ、きっとどこに行っても、楽しいに違いない。
 アレクセイの思いは春の宵を駆け巡った。

 
            THE END


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