春の夢 18

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 明け方、虚ろに目蓋をあけたロジァは、彼の横にいるひどく美しい悪魔を見つめた。
 同時に恐ろしい淋しさが押し寄せた。
その男をいつの間にか泣きたいくらいに好きになっている自分。
本当はすがり付いて泣きたい程なのに、手を伸ばせばすぐにも届くのに、彼は頑なに唇を噛むしかできなかった。
 そんな悪魔に魅入られた自分がロジァは悔しくてならなかった。
 
 
 アレクセイはそれ以来、何かというとロジァを誘い、引っ張り回した。
或いは、仕事の帰りに待ち伏せしてロジァを自分の部屋に連れ帰った。
 そして一年が過ぎていた。
 最近、アレクセイの付きまといがプッツリ途絶えた。
相変わらず、オフィスで彼をからかうのはやめないが、キャンプだ、美術館だ、何だと彼を連れ回していたのが、何も言わなくなった。
 最後に、アレクセイの部屋にいた時、ある電話の相手にアレクセイは嬉しそうに話していた。
ハンス、と呼んでいた。
ニューヨークに来るらしいことを話していた。
「いやに嬉しそうじゃねぇか」
 そうロジァが言うと、アレクセイが、「妬けるだろ?」などというので、
「何で俺が妬かなけりゃならねんだよ!! ノウテンキやろう!!」
 とロジァは言い返した。
 ロジァはビールを喉に流し込みながらそんなことを思い出していた。


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