春の夢 19

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 確かにあの時アレクセイは嬉しそうに受け答えしていた。
 自分を追い回していたのは、きっと退屈しのぎだったのだろうから、今更どうということはないが…
 ロジァは袖で口の辺りを拭う。
 あれだけしつこく追い回されていたのに、パタリとそれが止んで、ちょっと淋しい気もすることがまた気に食わない。
 ハンスは、アレクセイが所属したことのあるGチームのオーナーだと言っていた。
 ケンもそのハンスと会ったらしく、アレクセイとオフィスで話していたのがロジァの耳にも入った。
 得体の知れない不安がロジァを襲った。
 いつのまにか、アレクセイのアパートメントの前に立っていた。
 夜、ロジァはそこの住人であろう、一台の車が駐車場に入ろうとした時、つい一緒に中に入ってしまった。
 しかし、部屋に訪ねていくのもバカバカしいと思いながらも、出るに出られない。
 そこへアレクセイの車が戻ってきた。
 笑いながら降り立った二人の男。
 そして、見知らぬ男が不意にアレクセイにキスした。
 アレクセイは笑いながら男の首に腕を回した。
 誰も見ていない筈の場所であるからか、かなり本格的なキスだった。
 いつか美術館である女優と出くわし、いきなりアレクセイがキスされたこともあった。
 その時も、ロジァは思わずひどくジェラシーを覚えたが、今度の場合はかなりショックを受けた。
 ニュースキャスターが、美人女優の傍は勿論、彼をダンディな紳士の横に立たせてもとてもよく似合う、などと冗談めかしていっていたのを聞いたことがあるが、ロジァはそれはジョークじゃないという気がした。
 ガキと遊ぶのは飽きたんだろ。
 ロジァはこそこそそんな真似をした自分が情けないと思いながらも、涙が込み上げてくるのをどうしようもなかった。
 わかってたこった…あの妖怪め…
 バイクを走らせながら、ふっと、ハドソン川にそのまま突っ走りたい気分になった。
が、寸前でターンした。
 心が冷えてきた。
 クッダラねー!! 何、バッカなこと考えてんだ。
 あんな妖怪どうにでもなれっての。


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