春の夢 30

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 ハンスはフッと溜め息をつく。
「よくそんなきれいな顔して平気で恐ろしいことを言うな。だいたい、ちょっと見が女かと思うようなお前が、よくマシンなんか動かすぜ」
「女性の戦闘機パイロットだっているんだぜ? 実は俺も空軍で戦闘機の訓練を受けたこともあるんだ」
 笑うアレクセイに、ハンスはしばし唸る。
「…ウム、わかったよ。とにかく、あれを使うか使わないかは別として、考えといてくれ」
 ハンスに念を押されて別れたその数日後だった。
アレクセイは局長に呼ばれた。
「プライベートに立ち入るつもりはないが」
 アレクセイはドキリとした。
 ロジァとのことをいよいよ嗅ぎ付けられたのかと。
 しかし、局長の話は別の件だった。
「F1などに参戦するのは、控えた方がよくないかね。君はレーサーであるより前にまず、ここ宇宙局の科学者だ。ただでさえ危険がつきまとうかも知れないコマンドのメンバーでもある。必要以上の危険性を背負込むのはどうかね?」
 昨年秋、天才レーサーとうたわれたサム・アレンがレース中事故死したニュースは世界中を駆け巡った。
 ファンならずともショックを受けたものは少なくなかったはずだ。
 その記憶はまだ生々しい。


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