春の夢 4

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 様々な訓練を受けた科学者六人で構成されているとはいえ、このコマンドは一種物々しい響きを持つその名から連想させるイメージからはほど遠く、宇宙開発プロジェクトの総合管理をすると同時に、プロジェクトそのものにも勿論各々が参加しつつ、所内の、或は対外的な学術的なトラブルにも積極的に対処していくという、簡単に言えば所謂何でも屋的なセクションなのである。
 仕事の内容といえば、実にくだらないと思われるような科学者同士の言い争いの仲裁や通風孔に巣をかけた鳩の移動などというものから、CIAに手を貸して、産業技術研究センターから盗まれた高温超伝導体のデータを取り戻すというようなスパイまがいの仕事まで多岐にわたる。
 六ヵ月の訓練とテストの結果、最終的に選ばれた六人は、ミレイユ・デルボー、マイケル・ジョーンズが二十四歳、ケン・ロウエル、アレクセイ・リワーノフが二十三歳で、いずれも各々の分野で活躍している科学者ばかりだったが、この六人の中にはティーンエージャーが二人混じっていた。カテリーナ・ヴァザレッリが十六歳、そして十五歳のロジァ・スターリングである。
 しかもロジァ・スターリングは宇宙局長の息子であり、宇宙局幹部の決定とはいえ、宇宙局副長官エッシャーは、そのロジァを『コマンド』のボスに据えたのである。これが他のメンバーの反発をかっていた。それは主にアレクセイであるが、小憎らしいまでに冷静で完璧なボスのアラを探すのはまた一筋縄では行かなかったのだ。
 結成から約一年、何かと紆余曲折の末、今現在、スタッフの内部もとりあえずは落ち着いたように見えていた。
 宇宙航空工学やロケット工学を始め医学の分野でもその名を知られたアレクセイ・リワーノフは、十七歳の時にS国から亡命した科学者という経歴には特異なものがあるが、西側に来てからは、F1レーサーとして、或はヨーロッパ社交界の華として、その存在は全世界に知れ渡り、今や彼がどこの国の人間だったかなどということは取り沙汰するに値しない。


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