春の夢 49

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 ミレイユは気になっていたことを聞いた。
「むかし人妻に手を出して以来、逃げるのは慣れてるんだ」
 アレクセイは苦笑いする。
「しかし、やっぱお前のパンチは聞いたぜ。もう一回、医務室行ってくる」
 そう言ってアレクセイが立ち去った頃、マイケルがポツリと言った。
「あいつ、何となくヘンじゃないか? 最近」
 それに対して、あとの二人は何も答えなかった。
 
 

 翌日のコマンドは何事もなかったように活動していた。
 アレクセイの頬のガーゼが痛々しげに見えただけである。
 局内ですれ違う者が一様に、どうしたんだ、と聞く。
 アレクセイは適当に受け答えしている。
 ハンスからアレクセイに電話があったのは、そんなある日のことだった。
 一度は断ったのだが、ハンスの言うには、ドライバーがテスト走行中にクラッシュして大怪我をしたために、アレクセイに是非引き受けてほしいと言うのである。
「だから、あれは俺以外使わせるなって言っただろ」
 アレクセイは一瞬躊躇したものの、結局彼は引き受けることにした。
 それが彼の進退問題にもなりかねないこともよく分かった上で。
 コマンドは平和そうに見えた。


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