春の夢 56

back  next  top  Novels


 ロジァがソファに座ると、ジョーもその後に続いて、その横に陣取った。
 ハイスクールの校長をしていたケンの父親の顔は、ロジァも知っていた。
 まだロジァが十歳になるかならない頃だったが、徒党を組んでバイクのエンジンを吹かしているポールたちとつるんでいるところを厳しい顔で睨み付けていたことがあった。
 家も近くだし、ひょっとしたら、ケンはロジァのことも知っているのかもとは思っていた。
「最近、滅多に客なんか来ないからな、散らかしてるけど」
 やがてケンはコーヒーの入ったマグカップを二つ持ってきた。
「そうそう、こないだアレクセイが来たっけ……」
 ケンは何気なく、ロジァを見た。
「へえ…」
 ロジァはそう関心もなさそうに、部屋を見回した。
「一人で住んでるんだ?」
「ああ。親父の残してくれた家だから、大事にしようとは思うけど、一人では広いな。ロジァのとこは、三人だっけ?」
「親父は殆ど帰らねーからな。俺とティムだけだ」
 ロジァは熱いコーヒーを啜る。
 何となくこの家にはとっくに忘れてしまったような、穏やかな空気があった。
 いつのまにか膝に顎を乗っけているジョーの首の辺りをロジァはさすってやる。
 するとジョーは太い前脚まで乗っけてきた。
「えらく馴々しいな、ジョーのやつ」
 ケンは笑いながら、ロジァに聞いた。
「犬、好きなんだ?」
「ああ、俺んちにもどうしようもないのがいて、やっぱり、すげー甘えん坊さ。ゾロってんだ」
 そう言ってロジァは笑った。


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ

ようこそ、お立ち寄り有難うございます。お気楽ハピエンBL小説です。