春の夢 60

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 ミレイユでなかっただけだ。
「あいつ俺には必死で弁解してたけどな。誰かれ構わず、相手にしてるわけじゃないって。俺も、マスコミに踊らされて、結構色眼鏡で見てるとこあるからな」
 ケンがそう言うのに対して、ロジァは苦笑する。
「同僚には、いい顔してえんだろ? けどよ、局長のクソジジイが、俺の言うことなんか聞くかわからねーぜ。まあ、俺が辞めるか、奴が辞めるか、どっちがいいかってとこだな。そうだ、いい方法があるぜ。こんだ、俺が奴をぶん殴るんだよ。そうすりゃ、レースだなんだなんてこた忘れて、俺を辞めさせるかもな」
「ロジァ!!」
 乾いて冷えきったロジァの目。
 どうしてそんな目をするんだ?
 ケンは思った。
 ロジァは出て行った。
 ジョーがロジァがドアを閉めるまでを見送って尻尾を振っていた。
 ケンは溜息をつき、ベッドに寝転がって、天井を見上げた。
「なんて目をするんだろ…」
 何者も寄せ付けない、獣の目だ、と彼は思った。
 それはあの鉄面皮の司令官と同一だという気がした。
 一年、本当に少しずつ、彼が打ち解けてくれてきたように思っていたのに。
「アレクセイか…鍵は…やっぱ…それで、俺のせいで、ロジァに途方も無い不信感を与えたとか?」
 ケンはベッドに起き上がり、呟いた。


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