春の夢 66

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 ケンは慌ててシャツのボタンをとめ、ベッドを降りた。
「時間がないんだ。急いでくれ」
「何なんだよ、一体」
 ケンはロジァの腕を掴んだまま、階段を降りる。
「車、下に停めてあるから」
 約束をすっぽかされても尚、探しにくるあたり、いい根性をしていると、ロジァは思う。
 しかも立ち直りが早い。
 ケンはロジァを車に乗せて自分の家に戻ってきた。
 とっくに、ヘリコプターが庭に待機している。
 ロジァの腕を引っ張って慌てて駆け付けると、渋い中年の男が一人立っていた。
「Mr.ロウエル?」
 固いドイツ語訛りで男が聞いた。
「あ、そうです。遅れて申し訳ありません。彼はロジァ・スターリング」
「どうぞ、こちらへ」
 ケンはロジァの腕を引っ張ってヘリコプターの前に出る。
「どこ行くんだよ、ケン」
 うさん臭そうにロジァは尋ねた。
「行けば分かるよ」
 ケンは笑った。三人が乗り込むと、間もなくヘリコプターは舞い上がった。
 誰も、ケンも何も言わなかったので、眼前にサーキットが見えてきた時、ロジァは驚いた。
 思いもよらなかった。
 ヘリコプターを降りると、男は二人をひとつのピットの中に案内した。


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