春の夢 67

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 既に決勝のスタートは切られていた。
「やっと来たな、おや、友達ってその坊やか?」
 ハンスが振り返って笑った。
 ケンはハンスにロジァを紹介した。
 握手を求められて、ロジァはフンとばかりに手を出そうともしない。
 仕方なく宙に浮いた手をハンスは引っ込めたが、その表情は明るかった。
「で、アレクセイ、どうなんだ?」
 ケンはハンスに尋ねた。
「好調好調、優勝いただきだぜ!! 絶対!!」
 ハンスは力を込め両方の拳を突き出して叫んだ。
 一昨日の電話で言っていた心配はどこにいったかとケンは思う。
 一方いきなりそんなところへ連れてこられ、しかもそこにいるのはあの時の男である、ロジァは何となく腹が立つ。
 帰ってやろうと思ったが、いつしか、しっかりサーキットを目で追っていた。
 
 
 我ながら、バカなことやってるな
 アレクセイはそんなことを思いながらハンドルを切る。
 彼の前には次のブレーキング・ポイントが見えているだけだ。
 フォーメイション・ラップを待つ間、彼の心搏数はおそらく予選の時よりも少なかったに違いない。
 異様に落ち着いている。
 ルシアン・ルーレットならぬルシアン・サーキットって奴だ。
 密かに一人笑いする。
 エンジンを最大限にパワーアップさせたまま、二日間の予選を終えた。
 無論、彼のベスト・ラップ・タイムは二位以下を完全に引き離していた。
 どちらかというと、無闇に走りすぎた。


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