春の夢 72

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 その横を、ぴったり後ろについていたロズベルグがアレクセイを抜いていく。
 さらに後方のジョーンズ、その後から来た一台にも抜かれる。
 幸いアレクセイはすぐマシンを立て直し、取り敢えず今度は追う形となった。
 ピットから、ハンスは急にペースダウンしたアレクセイを心配し、呼び掛けたが、アレクセイは答えず、ひたすら前方のマシンを追う。
 冷静ではあるが、内心は穏やかではない。
 前を見てはいるが、彼の意識は既にサーキットを離れていた。
 ロジァとの一年が彼の脳裏を過ぎる。
 やっぱりあの突き詰めた目から逃れることはできない。
 あの目は何かを言っている。
 だが、何を言っているんだろう?
 
 
 四十三週目だった。
 ロズベルグがスピンした。
 そこに、ジョーンズが激突、続けてその後ろのマシンもスピンしてリタイヤ。
 アレクセイは、はっとして、パワーを上げる。
 とにかく、早くゴールしよう、それだけの思いで、彼は結局そのまま逃げ切った。
 チェッカーフラッグが振られた。
 その歓声の中でアレクセイのマシンは一〇〇メートル程進んだ。
 と、突如マシンが火を吹き、あっという間に炎に包まれた。


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