歓声がどよめきに代わる。
ロジァは思わず飛び出した。
「アレクセイ!!」
ケンもハンスも後に続く。
すぐに火は消し止められた。
ガソリンの燃える強烈な臭いが煙と一緒に広がる。
ケンはその煙の中にまで飛び込もうとしたロジァの腕を必死で掴んだ。
一つの影がその中から飛び出した。
観衆のどよめきは溜息に変わった。
ヘルメットを取ると、長いプラチナブロンドが陽に映えてさらりと肩に落ちた。
溜息は再び歓声に変わり、ハンスは駆け寄ってアレクセイを抱き締めた。
ハンスはもとより、おそらく初めてのGPチャンピオンシップを勝ち得たアレクセイよりも、チームがこの勝利に酔った。
マシンは大破し、エンジンはアレクセイの予想通り燃えつきたにせよ。
しかしその夜、ホテルのホールで行われた祝賀パーティで、アレクセイはハンスに言った。
「俺はやっぱり、本物のレーサーにはなれないな」
「何言ってる! 優勝したんだぞ」