春の夢 75

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「もう、帰るのか?」
 ハンスが帰り支度をしているアレクセイに尋ねた。
「ああ、明日は仕事だしな。もっとも、行っても俺のデスクは無くなっているかもしれないが」
「局長には俺が話してやるよ」
 ハンスの言葉にアレクセイは笑った。
「バカ言え…」
 そんな表情はもの憂げだと、ハンスは思った。
「明日の朝、ヘリで送る。今夜、俺の部屋に来ないか?」
「いや…今夜は、帰りたいんだ…」
 アレクセイは言った。
「お前、何、悩んでる?」
 アレクセイはハンスを見た。
「俺は、どうしようもないバカだ…」
「俺にも言えないって?」
「いつか、そのうちに…な」
 ハンスはそれ以上何も聞かなかった。
 ただ、話してもらえない存在であるのが、悲しかった。
 酔いが醒めた頃、アレクセイとケンの二人を乗せたハンスの自家用機は、彼の操縦で、ニューヨークまで飛んだ。
 ニューヨークに到着するまで、アレクセイは目を閉じていた。
 ケンは眠っているのだろうと思い、声をかけなかった。


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