春の夢 80

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 自分では駄目だと思っていた。
けれど、悔しくて泣いた。
 アレクセイにはそんなカテリーナの言葉が聞こえるような気がしていた。
 それを考えても、彼女を傷つけてまで? と思う。

 
 
 夕方近く、一本の電話がボックスに入った。
 外からボックスへの緊急ダイレクト・ラインである。
 コール音に皆が一瞬、はっと息を飲んだ。
 緊急ラインを知る者は少ないはずだった。
 カテリーナがそれをとった。
 ロジァかと思ったからだが相手は違っていた。
「ティム、一体、どうしたの? 何か、あったの?」
 カテリーナの声に、アレクセイはギクリとする。
「え…アレクセイに? 分かったわ」
 カテリーナはアレクセイに、電話を取るようにいった。
「何なんだ?」
 ケンがカテリーナに聞いたが、彼女は首を横に振るだけだ。
「分からないわ。ティムから…ロジァのことでアレクセイに代われって言うだけで…」
 アレクセイが受話器を取ると、ティムが矢継ぎ早に喚いた。
「アレクセイだ、ロジァがどうした?」


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