春の夢 82

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 アレクセイが聞くと、ポールは拳でテーブルを叩く。
「つい今し方だ。ブロンクス方面に走ってった。こいつはちょっとのっぴきならねー事態だと思った。ベッカーの仕業とも思ったが、何か違うような気がしたんで、あんたに報せた方がいいと思ってよ」
 アレクセイからすればポールの判断は賞賛に値した。
「連絡を入れるから、ここで待機しててくれ。何か連絡が入ったら、車に報せてくれ。それで、万が一、俺も戻らなかったら、ティム、ボックスに報せてくれ!」
 アレクセイはスターリング家の前に停めてあったポルシェをブロンクスに向けて走らせた。
 ベッカーの仕業ならばまさか問題はないと思う。
 しかし、もしもロジァがどういう人間かを知って別の何者かが拉致しようとしたのだとしたら? 使い方によってはとんでもない存在だ。
 一体何者が? もし東側となれば、ことは重大だ。
 携帯が鳴った。
「どうした?」
すぐに興奮したポールの声が社内に流れた。
「ロジァから、たった今連絡があった! ヒューと一緒にブロンクスのボロアパートに隠れてるって! 相手は銃を持ってるらしい!! やっぱただもんじゃねー!! 場所を言う」
 ポールから場所の説明を受けると通り過ぎているのがわかった。
 アレクセイはUターンし、アクセルを踏んだ。
 ロジァが無事だということだけで、不安は消えたがやがて憤りに変わった。
「一体何者だ!?」


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