春の夢 83

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 ヒューがポールの携帯に送ってきたという位置情報を、ポールはアレクセイに転送した。
 アレクセイは画面でその位置を確認しつつ、裏通りの古い五階建てのビルの階段を上がった、一階の右端茶色の煤けたやつだ、というポールの言葉を頭の中でなぞる。
 ポールはすぐに俺達も駆け付ける、と付け加えた。
 来るなといっても聞かないに違いない。
 アレクセイはスピードを落とし、辺りを見回しながらゆっくり車を進めた。
 それらしいビルを見付けると、車を停めた。
 ゆったりとした上着の下のホルスターにはマグナム44が納まっている。
 隣の路地から、そのビルの廻りに敵がいるかどうか探しながら、アレクセイは静かにそのビルに向かって歩いていく。
 その時、ちょうどビルの階段を上がろうとする女性がいた。
 アレクセイは足早に近付き、こんばんわ、マダム、とさり気なく挨拶を装いながら、つられて、こんばんわ、と返すそのマダムを追い越して階段を上がった。
 アレクセイは目指す部屋のドアを見付けると、ポールに言われた通り、「TVの修理に来ました」と言った。
 ドアを開けたのは、若い女性だった。
 明らかにひどく怯えている。
 入るとすぐにドアを閉め、「ロジァ、いるのか?」と聞いた。
 隣のドアが開いて、一人の頑健な感じの青年が現われた。
 しかしジーンズの太股が真っ赤である。


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